07. 天使の彫像


『後の世に【神の手を持つ物】――
と称される彫刻家『Auguste Laurant』(オーギュスト ローラン)
戦乱の最中に失われ 平和と共に姿を現したとされる
未だ神秘の薄布(ヴェール)に包まれた彫像 彼の稀代の傑作
『天使』(アーンジェ)に秘められし 知られざる《物語》(ロマン)……』NA:深見梨加

「物言わぬ冷たい石に 生命(いのち)を灯せる等(など)と
俗人達が謳うのは 唯の驕(おご)りに過ぎぬ
在る物を唯在る様に 両の手で受け止めて
温もりに接吻(くちづ)けるように 想いを象(かたど)るだけ……」

《風車小屋(ムーラ ナ ヴァン)》 空を抱いて 廻(まわ)り続ける丘の上
工房(アトゥリエ)は他を拒むように 静かに佇む影…

彼は唯独りで描いた 我が子の表情(かお)も知らずに……

【足りないのは小手先の素描力(デッサン)ではない――現実をも超える想像力(イマジナシオン)】
「嗚呼…光を…嗚呼…もっと光を…『即ち創造』(クレアシオン)…憂いの光を……」

生涯逢わぬと誓いながら 足げく通う修道院(モナステール)
子供達の笑い声 壁越しに聴いている…
「君の手が今掴んでいるであろう その《宝石(いし)》はとても壊れ易い
その手を離してはならない 例え何が襲おうとも……」

彼は日々独りで描いた 我が子の笑顔(かお)も知らずに……

【必要なのは過ぎし日の後悔(ルグレ)ではない――幻想をも紡(つむ)ぐ愛情(アフェクシオン)】
「嗚呼…光を…嗚呼…もっと光を…『即ち贖罪』(エクスピアシオン)…救いの光を……」


『如何なる 賢者 であれ 零れる砂は止められない
彼に用意された銀色の砂時計 残された砂はあと僅か……』NA:深見梨加

母親の灯(ひ)を奪って この世に灯った小さな《焔》
その輝きを憎んでしまった 愚かな男の最期(さいご)の悪足掻き…
想像の翼は広がり やがて『彫像』の背に翼を広げた――
「嗚呼…もう想い遺すことはない やっと笑ってくれたね……」


「もういいよ…パパ」


「其処にロマンは在るのかしら?」CV:能登麻美子





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