03. 見えざる腕


眠れぬ宵は路地裏の淫らな雌猫(シャット)に八つ当たりして…
嗚呼…見えざるその腕で首を絞める…
《夢幻影(ファントム ド レーヴ》壊れゆく自我(エゴ)の痛み…
狂えぬ酔いは屋根裏の小さな居城(シャトー)を転げまわる…
嗚呼…見えざるその腕の灼(や)ける痛み…
《幻肢痛(ファントム ドゥルール)》安酒(やすざけ)を浴びて眠る…


「…アルヴァレス将軍に続け!」CV:飛田展男
『黄昏に染まる古き獣の森…戦場で出逢った二人の男…
金髪の騎士(ローラン)…赤髪の騎士(ローラン)…
争いは巡り…屍を積み上げる…
加害者は誰で…被害者は誰か?
斜陽の影に刃は緋黒(あかぐろ)く煌めいて―』NA:大塚明夫

片腕と共に奪われた 彼の人生(サ ヴィー)
仕事は干され恋人は出ていった…
何もかも喪(うしな)った奪われた最低な人生(ラ ヴィー)
不意に襲う痛みに怯える暮らし……
「大抵の場合(ル プリュ スウヴァン)…貴方はうなされ殴るから…
私は…此の侭じゃ何(いず)れ死んでしまうわ…
さよなら(オ ルヴォワール)…貴方を誰より愛してる…
それでも…お腹の子の良い父親(ペール)には成れないわ…」


『葡萄酒(テュ ヴァン)…発泡葡萄酒(テュ シャンパーニュ)…蒸留葡萄酒(テュ オー ド ヴィ)…』
「嗚呼…眠りの森の静寂を切り裂き…また奴が現れる――」CV:飛田展男

馬を駆(か)る姿…正に悪夢…赤い髪を振り乱して…振(ふる)う死神の鎌…
首を刈る姿…正に風車…緋(あか)い花が咲き乱れて…奮(ふる)う精神の針…
闇を軽るく纏(まと)った――
夢から覚めた現実は 其れでも尚も悪夢(ゆめ)の中
故に…其の後の彼の人生は 酒と狂気…廻(めぐ)る痛みの中
左の頬に十字傷 赤く燃える髪に鳶色(とびいろ)の瞳
奴を…殺せと腕が疼くのだ 『見えざる腕』が疼くのだ…
誰が加害者で…誰が被害者だ…死神を捜し葬ろう…


「殺してくれる…!」

『騎士(シュヴァリエ)]は再び馬に跨り(またがり)…時は黙したまま世界を移ろう……』NA:大塚明夫

『異国の酒場で再び出会った二人の男(ローラン)』NA:大塚明夫

隻眼(せきがん)にして隻腕(せきわん) 泥酔状態(アル中)にして陶酔状態(ヤク中)…
嗚呼…かつての蛮勇 見る影も無く…
不意に飛び出した 男の手には黒き剣(エペ ノワール)

「退け」CV:保志総一朗
「うわぁぁっ!」
周囲に飛び散った液体(サン) まるで葡萄酒(ピノ ノワール)
「何者だ貴様…っ…ぐぁ!」CV:若本規夫
「ボン ソワール」CV:保志総一朗
刺しながら…供(とも)された手向けの花の名―「こんばんは(ボン ソワール)」
抜きながら…灯された詩(うた)の名―「さようなら(オ ルヴォワール)」

「オ ルヴォワール」CV:保志総一朗

「はははは……ッ!」CV:保志総一朗
『崩れ落ちた男の名はLaurant(ローラン) …走り去った男の名はLaurencin(ローランサン)…
もう一人のLaurant(ローラン)は…唯…呆然と立ち尽くしたまま…』NA:大塚明夫

誰が加害者で…誰が被害者だ…犠牲者ばかりが増えてゆく…
廻(まわ)るよ…廻(まわ)る…憎しみの風車が…躍るよ…躍る…焔のように…
嗚呼…柱の陰には…少年の影が…鳶色(とびいろ)の瞳(め)で…見つめていた…


「人生は儘ならぬ…されど…
此の痛みこそ 私が生きた証なのだ…」CV:飛田展男

『復讐劇の舞台を降ろされ…男は考えはじめる…
残された腕…残された人生…見えざるその意味を―
杯(さかずき)を満たした葡萄酒…その味わいが胸に沁みた…』NA:大塚明夫

「其処にロマンは在るのかしら…?」CV:能登麻美子





TOP
朝と夜の物語 見えざる腕 呪われし宝石 星屑の革紐 緋色の風車 天使の彫像 美しきもの 歓びと哀しみの葡萄酒 黄昏の賢者 11文字の伝言  屋根裏ロマン



inserted by FC2 system